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立退料コラム③ 立退料はいくらもらえるのか

2025/02/09 コラム 
by HIROAKI-ICHINO 

前回のコラムでは、大家から契約の更新を拒絶されたり、退去を求められたりした場合に、普通借家契約であれば「正当事由」が問題になることをご説明しました。そして、この正当事由を考える上で、重要な要素の一つとなるのが「立退料」です。

大家から立退きを求められた場合、「立退料はいくらもらえるのでしょうか」という質問をよく受けます。しかし、結論からいうと、立退料に明確な相場はありません。「家賃の6か月分」「家賃の1年分」といったように、一律に決まっているものではありません。大家側が立退きを求める理由、借主側がその建物に住み続ける必要性、立退きにより被る不利益、建物の現況などによって、金額は大きく変わります。

ここで重要なのは、立退料は、単純に「引越しにかかる費用、そのほか諸経費を補填してもらうお金」ではないということです。前回ご説明したとおり、普通借家契約の場合、大家側が契約を終了させるためには正当事由が必要になります。立退料は、この正当事由を補完する要素の一つとして考慮されます。例えば、「大家側に立退きを求めるそれなりの理由はあるが、それだけでは正当事由として十分とはいえない」場合に、相当な立退料を上乗せすることによって、総合的に「正当事由あり」とする合わせ技が実務ではよく使われています。

このような比較衡量により、大家側の立退きを求める事情が強ければ、立退料の金額は比較的低くなります。逆に、大家側の立退きを求める事情が弱ければ、立退料の金額は比較的高くなります。例えば、大家側の事情が、「転勤等により空き家になったものを貸していたが、そこに戻らなければ生活できない事情が生じた」となれば、大家側の事情は強いと言えるでしょう。逆に、「建物を取り壊して更地にして転売したりマンションを建てれば儲かる」という理由で物件を取得した大家であれば、スタート時点で正当事由はかなり弱いと言えます。

上述の理由から、「立退料さえ多く支払えば、どのような場合でも大家が借主を退去させることができる」ということではありません。大家側に正当事由となる事情が十分にない場合には、どれほど高額の立退料を提示しても明渡しが認められないことさえあります。次回は、実際に大家から立退料を提示された場合、その金額の妥当性の判断についてお話しします。

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