古くなったマンションをどうするかという問題は、これまで乱暴にいえば「建て替えるか、それができなければ修繕しながら使い続けるか」という二択になりがちでした。しかし、建替えが現実的でないマンションは少なくありません。費用の問題もありますし、区分所有者全員が新しいマンションを必要としているわけでもありません。建物を維持することに経済的な合理性がなくなっていても、建替えについて合意できなければ、そのまま区分所有関係を続けざるを得ないという場面もありました。
2025年に成立し、2026年から施行される今回の改正では、この点が大きく変わります。建替えだけでなく、建物を一棟リノベーションする建物更新、建物と敷地を一括して売却する建物敷地売却、建物を取り壊して敷地を売却する建物取壊し敷地売却などについて、多数決による決定が可能になります。従来、区分所有者全員の合意を得なければ実現が難しかった選択肢についても、区分所有関係を解消するための制度が整備されたことになります。
もっとも、今回の改正のポイントは、単に多数決でできることが増えたという点ではありません。マンションを売却したり、取り壊したりするということは、反対する区分所有者の権利にも直接影響します。そのため、原則として5分の4の多数決が必要とされる一方、一定の場合には4分の3まで決議要件が緩和されます。そして、決議後には、反対した区分所有者の権利を処理するための制度も用意されています。再生を決める多数決と、反対者の権利をどのように整理して実際の事業につなげるのかは、一つの問題として考える必要があります。
また、古いマンションでは、所在等不明の区分所有者も現実的な問題になります。区分所有者が死亡し、相続関係が整理されていない。登記上の住所に連絡しても所在が分からない。このような区分所有者がいると、再生の方法を決める以前に、そもそも誰を相手に意思決定をすればよいのかという問題が生じます。今回の改正では、この所在等不明区分所有者への対応についても制度が整備されています。老朽マンションでは、建物の老朽化と同時に、所有関係そのものも複雑になっていることが少なくありません。
今回の改正によって、老朽マンションについては、建て替えるのか、建物を更新するのか、売却するのか、取り壊して土地を売却するのかという複数の選択肢を比較することになります。ただ、選択肢が増えたからといって、答えが簡単になるわけではありません。どの方法が合理的なのか、反対する区分所有者をどう扱うのか、所在等不明の区分所有者を含めた権利関係をどう整理するのか。今回の改正は、建替えが難しいから何もできないという状態から抜け出すため、マンションの「出口」を複数用意した改正だといえるでしょう。