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新たな遺言の方式として「保管証書遺言」が創設されました

2026/06/05 コラム 
by HIROAKI-ICHINO 

2026年6月、遺言制度を見直す民法改正が成立し、新たな遺言の方式として「保管証書遺言」が創設されることになりました。現在、遺言書といえば、自分で全文を手書きする自筆証書遺言か、公証人に作成してもらう公正証書遺言が代表的な方法です。今回の改正では、これらに加えて、電子データ等を利用して作成し、法務局で保管する新しい方式が導入されることになります。もっとも、この制度はまだ利用できる状態にはなっていません。保管証書遺言の創設に関する部分は、法律の公布から3年以内に政令で定める日から施行される予定です。

新しい保管証書遺言の大きな特徴は、これまでの自筆証書遺言のように、遺言の全文を手書きする必要がない点です。法務省が公表している改正内容によれば、電子データ等で作成した遺言を利用することが予定されています。そのため、将来的には、パソコンなどを利用して遺言の内容を作成するという方法が、正式な遺言の方式として認められることになります。ただし、単にパソコンで遺言書を作って保存しておけば有効になるという制度ではありません。遺言書保管官の前で遺言の内容を確認するなど、一定の手続を経た上で、法務局に保管されて初めて効力が生じる制度となる予定です。

現在の自筆証書遺言には、「自分で手軽に作れる」という大きなメリットがあります。一方で、全文を自書しなければならないという原則があり、書き方を間違えると遺言自体が無効になる可能性もあります。また、自宅で保管していた場合には、紛失したり、相続人に発見されなかったりするリスクもあります。現在でも、自筆証書遺言を法務局で保管する制度はありますが、この制度を利用する場合でも、遺言書自体は原則として自筆証書遺言の方式に従って作成する必要があります。今回創設される保管証書遺言は、この点をさらに進め、遺言の作成そのものにデジタル技術を利用できるようにするものといえます。

一方で、公正証書遺言には、公証人が関与するため、形式上の問題が生じにくく、原本も公証役場で保管されるという大きなメリットがあります。その反面、公証人との手続が必要であり、費用もかかります。新しい保管証書遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言の中間に位置するような制度になる可能性があります。自筆証書遺言よりも作成しやすく、法務局で保管されることによって紛失や未発見のリスクを減らすことができる一方、公正証書遺言とは異なり、公証人が遺言の内容そのものを作成する制度ではありません。

今回の改正によって、遺言書を作成するための選択肢は今後さらに増えることになります。ただ、方式が増えたからといって、「どの方式でも同じ」ということにはなりません。財産の内容、相続人の人数、相続関係の複雑さなどによって、自筆証書遺言が向いているケースもあれば、公正証書遺言の方がよいケースもあります。新しい保管証書遺言が実際に利用できるようになった後は、この方式も含めて、どの方法がその人に合っているのかを考える必要があるでしょう。遺言制度は、社会のデジタル化に合わせて少しずつ変わっていく一方で、「どのような内容の遺言を残すか」という本質的な問題まで簡単になるわけではありません。今回の改正は、遺言を作るための手段を増やす重要な一歩といえそうです。

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