前回までのコラムでは、訴訟提起前のさまざまな交渉のフェーズ(内容証明郵便、返済条件の交渉、公正証書の作成)についてご紹介しました。今回は、いよいよ訴訟提起に踏み切った後の流れをご説明します。
裁判所に訴状を提出すると、通常は1〜2ヶ月後に裁判の第1回期日が開かれます。被告(=訴えを起こされた側のこと、債権回収であれば債務者のことです。)は、反論があれば第1回期日の1週間前までに反論書面(=答弁書といいます。)を提出しなければいけない決まりになっています。
第1回期日では、まず、裁判所から当方に対し、訴状の記載内容についてその場で補足説明を求められます。同じように、裁判所から被告に対し、答弁書の記載内容についてその場で補足説明を求められます。当方の再反論が必要と裁判所が判断した場合は、通常は1〜2ヶ月後に第2回期日が指定されます。再反論の書面と追加の証拠は、第2回期日の1週間前までに提出しなければいけません。
第2回目以降の期日は同じ流れで反論と再反論が相互に繰り返されます。どこまで繰り返されるかは裁判所の判断次第です。裁判所が「もう十分に反論と再反論が尽くされた」と考えたときに審理が終結となり、判決が言い渡されます。審理の回数はケースバイケースです。債権回収の場合は、契約書や借用書がある事案では比較的短く、契約書や借用書がない事案では比較的長くなりがちだという傾向はあります。ただ、被告がどういう反論をしてくるか、裁判所がどこまでで「十分」と思うかにもよりますので、事前に正確に回数を予測することはほぼほぼ不可能です。
実際のところ、1回で審理が終わるケースもあれば10回以上審理が続くケースもあります。審理回数に上限の決まりはありませんが、私の肌感覚では多くて15回程度がせいぜいだろうとは思います。ただ、特殊な事案では20回を超えることもあるようです。仮に審理が10回続くとなると、期日は1〜2ヶ月に1回のペースで開かれますので、単純計算で判決まで1〜2年はかかる計算となります。これが、「裁判となれば早くて数ヶ月、長くて年単位」といわれる理由です。
なぜ期日は1〜2ヶ月に1回のペースなのか、もっと短いスパンでやればいいじゃないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。これは、裁判所が反論の準備期間を標準で1ヶ月に設定しているためです。私一人で反論書面を書くだけの作業であれば1ヶ月も準備期間はいらないかもしれません。ただ、実際は、被告の反論のうちどこが事実でどこが事実と違うかの事実確認をしたり、反論の方向性について依頼者の方と打ち合わせをしたり、追加で出す証拠を整理したり(=ときに膨大な分量となることもあります。)、資料を取り寄せたり、関係者や協力者の方から事情を聞いたり、判例や文献を調べたりといった多くの工程が必要となるケースも多いのです。これらを全部やると、1ヶ月の準備期間はあっという間に過ぎてしまいます。
話を少し戻します。訴訟の回数がトータルで何回になるかは事前にはわからず、予想外に早く終わるケースもあります。そのため、私が費用をご提案させていただく際は、「訴訟は予想外に早く終わることもあるので、当初いただく着手金はできるだけ低く抑え、長期化した場合には回数に応じて追加の費用をいただく」形でのご提案をさせていただいております。初めから多めの着手金をもらって、早く終わっても長く続いても一律とするのも一つのわかりやすい方法だとは思うのですが、一回で裁判が終わるケースで高額な着手金をいただくのはどうにも居心地が悪く、いろいろと試行錯誤した結果こういう形に落ち着きました。
訴訟をご依頼いただく場合の費用につきましては、通常の着手金+成功報酬型の費用体系のほかにも、成功報酬のない定額方式や月額方式など事案に応じたフレキシブルな費用体系のご提案可能です。費用のお見積りは無料ですので、どうぞお気軽にお問合せください。
訴訟が長期化するのは、誰にとっても嫌なことです。そのため、「訴訟上の和解」という仕組みを使って訴訟を途中で終わらせるという手が実務では頻繁に使われています。多くのケースでメリットがデメリットを上回る絶妙な解決方法なのですが、「和解」という言葉の響きもあり依頼者の方から嫌がられることも少なくありません。次回のコラムでは、そんな「訴訟上の和解」のメリットとデメリットをざっくばらんにお伝えします。