2023年4月の民法改正により、相続放棄をした場合に「原則として」空き家の管理義務を負わないことになりました(*注1)。
この法改正前は、「相続放棄をしたとしても空き家の管理義務が残る」という問題がありました。「空き家の管理義務が残る」ということは、仮に空き家が朽ち果てて倒壊し、近隣等に損害を与えた場合は損害賠償責任を負う可能性があること、そのようなリスクが次の代にまで続いていくことを意味します。
そのような理由から、相続財産の中に空き家がある場合は相続放棄が「実質的に」使えない、あるいは相続放棄をしたとしても相続財産管理人(*注2)の選任を家庭裁判所に申し立て、予納金として最低でも数十万円の実費を立て替えなければいけない負担がありました。
この法改正により、相続放棄により空き家を手放すことができるケースが大いに増えました。空き家問題は今後ますます増えていくものと思われ、我が国が喫緊で対応しなければならない問題です。このような問題に一つの方向性をつける法改正といえるでしょう。
*注1 例外は、空き家を占有していた場合です。相続開始時に被相続人と同居していた場合などには、旧法と変わらず管理義務が生じます。
*注2 現在は「相続財産清算人」と名称が変わっていますが、本記事では当時の状況に忠実に「相続財産管理人」と表記しています。