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債権回収コラム① 内容証明郵便の送付

2021/11/10 コラム 
by HIROAKI-ICHINO 

債権回収にあたって、まず一番に選択肢となるのは「内容証明郵便の送付」です。内容証明郵便は、「いつ、誰が、どのような内容の文書を、誰に送ったか」を日本郵便が証明してくれるサービスです。一般の方も利用が可能なのですが、「郵便局で内容証明郵便を送った経験がある」方はほとんどいないのではないでしょうか。それもそのはず、内容証明郵便を送ろうとすると、普通の郵便に比べて費用もかかりますし、郵便局から発送する場合には手続にもそれなりの時間がかかります。そのような費用と時間をかけても、我々弁護士が法的に重要な文書を送る場合には、内容証明郵便を選択することがあります。なぜかというと、普通郵便で文書を送付した場合は、後になって相手方から「そのような郵便は受け取っていない」「そのような内容の文書は届いていない」と言われる可能性があるからです。

また、債権回収の場面では、時効との関係でも内容証明郵便を送付する意味があります。債権が時効に近づいている場合、債務者に対して支払を求める催告を行うことによって、一定期間、時効の完成を猶予することができます。もっとも、内容証明郵便を送れば時効が完全にリセットされるわけではありません。催告によって完成が猶予される期間には限りがありますので、時効が迫っている場合には、その後の訴訟提起なども含めて対応を考える必要があります。このように、内容証明郵便は単に「支払ってください」と伝えるためだけのものではなく、後の裁判を見据えて請求の事実や内容を明確にしておくため、また時効との関係で対応を急ぐ必要がある場合などにも利用されます。

もちろん、内容証明郵便を送っただけで、相手方に支払を強制することはできません。また、内容証明郵便を送れば必ず債権を回収できるというものでもありません。債権回収において内容証明郵便が重要なのは、単に請求内容を証拠として残すためだけではありません。債務者に対して、債権者が支払を待っているだけではなく、法的な手段を取ることも視野に入れているということを明確に伝える意味があります。内容証明郵便自体は裁判所とは全く関係ないのですが、上記のような特色から、内容証明郵便というと「弁護士からの通知」「無視すると裁判を起こされるかもしれない」という印象を抱く人も多いようです。

債権回収の場面で早く確実に債権を回収するためには、他の債権者よりも常に1歩、2歩先の先手を打つ必要があります。例えば、支払が遅延するや否やすぐさま弁護士からの内容証明郵便を送ってくる債権者と、ただ督促の電話をかけてくるだけの債権者が2人いたとします。あなたが資金繰りに困っている債務者だったら、どちらの債権者を優先して対応するでしょうか。もちろん、内容証明郵便を送ったからといって、その債権者への支払が必ず優先されるわけではありません。しかし、債務者の側からすれば、弁護士から正式な請求を受ければ、「このまま放置すると裁判になるかもしれない」と考えることは十分にあり得ます。相手方が複数の債権者への支払を遅滞している場合には、特に、早い段階で対応することが、その後の債権回収の成否に影響することがあります。

内容証明郵便による請求は、裁判に比べれば、費用も時間もずっと節約できます。まず内容証明郵便によって請求を行い、相手方がどのような対応をするのかを見る。その上で、相手方が支払に応じるのであれば早期に解決することができますし、一括での支払が難しいのであれば返済条件について直接交渉することも考えられます。一方で、相手方が請求を無視したり、支払に応じる意思がない場合には、訴訟を提起するのか、相手方の財産を保全する必要があるのかといった次の対応を検討することになります。このように、内容証明郵便は、債権回収そのものを終わらせる手続というよりも、その後の交渉や法的手続を見据えた最初の一手として重要な意味を持ちます。

債権回収では、「とりあえず内容証明郵便を送る」ことが目的ではありません。最終的に債権を回収するために、相手方の対応や財産の状況を踏まえながら、どのような手段を選択するのかを考える必要があります。そのため、内容証明郵便を送る場合にも、その後にどのような対応を取る可能性があるのかをあらかじめ考えた上で、請求内容や支払期限を定めることが重要です。内容証明郵便による請求は、裁判に比べれば「安く早く」対応することができ、債務者に「このまま無視すると次の手続に進むかもしれない」というメッセージを送ることができます。何もしない他の債権者に比べて優位に立てる可能性があるという点で、債権回収の初動として、とても有力な選択肢になります。次のコラム「債権回収コラム② 返済条件の直接交渉」では、内容証明郵便の送付後に債務者と返済条件の直接交渉をする際のポイントをご紹介します。

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