前回のコラムでは、内容証明郵便についてご紹介しました。今回は、内容証明郵便の送付後に債務者と直接交渉を行うフェーズをご紹介します。
約束の期限までにお金が支払われず、弁護士に依頼をしなければならない状況になっているケースでは、ほとんどの債務者は資金繰りに窮しています。ごく稀にお金があるのに財産隠しをして逃げる人もいますが、大多数の債務者は「お金を返したいけど返すお金がない」というのが実情だと思います。
昔の諺にあるように「ない袖は振れない」のですから、そのような状況で一括返済を求めても無理なものは無理です。分割で返してもらうことになるとして、一番良い条件を引き出すのがこのフェーズでの獲得目標となります。それでは、どのような条件をつけるのが良いでしょうか。
まず1つ目に大事なのは、担保の設定です。配偶者や親に資産がありそうであれば連帯保証人となってもらう。持ち家や不動産があるのであれば抵当権を設定する、といった方策が有力な選択肢となります。担保が設定できれば、もし債務者本人が支払不能となり、最悪の事態として破産にまで至った場合であっても、連帯保証人に代わりに支払ってもらったり、持ち家や不動産を競売にかけてその売却代金から債権を回収することができます。
2つ目に大事なのは、遅延損害金の設定です。遅延損害金をきちんと書面で取り交わしておかないと、民法所定の年利3%(注:本コラム執筆時の2022年時点)が適用されてしまいます。年利3%という水準は今の預金金利に比べればずっと高いですが、債権回収にかかった諸費用を考えると、大した足しにならないと感じられる方も多いと思います。これに対し、遅延損害金は、おおよその目安として10%から15%前後で設定されます(ただし上限があります。利息制限法を超えるような暴利を設定することは許されません。)。
3つ目に大事なのは、期限の利益喪失約款の設定です。期限の利益喪失約款とは、「分割払いの途中で約束を破ったら、残金を一括で返済しなければいけない」という定めです。期限の利益喪失約款がないと、例えば1000万円を毎月100万円ずつ10ヶ月で返済する約定となっていて、いきなり初月から支払いが滞った場合、期限の利益喪失約款があれば全額の1000万円の全額の請求ができますが、期限の利益喪失約款がないと期限を過ぎた100万円だけしか請求ができません。
このような返済条件の交渉を11万円(税込)からお受けしております。返済条件の交渉そのものもとても大事ですが、返済条件を書面化するのはもっと大事です。書面の内容がおかしいと、後に裁判になったときに立場が不利になりかねませんので、特に債権額が100万円を超えるようなケースでは、書面作成だけでもご依頼いただいた方が良いと思います。
次のコラムでは、書面の作成に特化して、公正証書の作成の際のポイントをご紹介します。